FXは元本や利益が保証される取引ではありません。公的情報と各社の契約締結前交付書面を確認し、仕組みとリスクを理解したうえで判断してください。
FXで利益が出ると、「雑所得になるのか」「いくらから確定申告が必要なのか」と迷う方もいるでしょう。国内の登録業者等を相手方とする一定のFX取引による差益は、税務上「先物取引に係る雑所得等」として、ほかの所得と分けて申告分離課税の対象になります。
一方、すべてのFXが同じ課税方式になるわけではありません。国内FXと対象外の海外FXでは所得区分や損益通算の扱いが異なるため、利用する業者と取引内容を確認することが重要です。
この記事では、国内FXの税率、確定申告が必要になる主なケース、20万円以下でも注意したい点を解説します。必要経費、損益通算、3年間の損失繰越、申告時に準備する資料まで整理します。
FXの利益は原則として雑所得に該当する

個人がFX取引で得た利益は、税務上は原則として雑所得に分類されます。特に、金融商品取引法上の市場デリバティブ取引や、第一種金融商品取引業者・登録金融機関を相手方とする一定の店頭FXの差金等決済による損益は、「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税の対象です。
国税庁は、対象となるFXの差益について、ほかの所得と区分し、所得税15%と地方税5%の税率で課税すると案内しています。2026年分では、所得税に加えて復興特別所得税も申告・納付します。
課税対象になるのは、単純な入出金額の差ではなく、その年に確定した取引損益などをもとに計算する所得です。未決済ポジションの評価益は、通常は決済損益とは分けて扱いますが、スワップポイントの確定時期はFX会社の仕組みによって確認が必要です。
まず年間損益報告書などで、その年の確定損益を確認し、必要経費を差し引いて所得金額を整理しましょう。
税金を考えるときは「口座残高がいくら増えたか」だけでなく、1月1日から12月31日までに確定した対象損益を確認します。複数のFX会社を使っている場合は、各社の年間損益報告書をそろえ、同じ税区分の取引を合算します。
未決済の含み益・含み損と、すでに確定した損益を分けて管理すると申告時に混乱しにくくなります。
参考:国税庁「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」
国内FXと海外FXでは課税方式が異なる

FXという名称が同じでも、国税庁の申告分離課税の対象になる取引と、対象外の取引では課税方法が異なります。業者の所在地だけでなく、登録や取引の法的な位置付けを確認することが必要です。
国内FXは原則として申告分離課税
金融商品取引法上の対象となる国内FXは、先物取引に係る雑所得等として申告分離課税されます。
申告分離課税とは、給与所得などと合算して所得税率を決めるのではなく、対象となる所得を分けて一定の税率で計算する仕組みです。
また、一定の先物取引に係る雑所得等の範囲であれば、損益通算や損失の繰越控除を利用できる場合があります。
国内FX会社を使っている場合でも、自分の年間取引報告書や商品区分を確認し、国税庁が定める対象取引に該当するかを基準に判断しましょう。
対象外の海外FXは原則として総合課税

国税庁の「先物取引に係る雑所得等」の特例に該当しない海外FXなどの利益は、一般の雑所得として総合課税の対象になるのが基本です。
総合課税では、給与所得などほかの総合課税の所得と合計し、所得税の累進税率を使って税額を計算します。
そのため、国内FXと同じ20.315%程度の税率を機械的に当てはめることはできません。また、国内FXの損失と対象外の海外FX利益を同じ「FXだから」という理由で通算できるとは限りません。
海外業者でも取引形態によって扱いが異なる可能性があるため、登録状況や年間損益資料を確認し、不明な場合は税務署や税理士へ相談するとよいでしょう。
国内FXと海外FXの両方を使っている場合は、口座ごとに「申告分離課税の対象か」「総合課税の雑所得か」を分類してから損益を計算します。名称がFXというだけで一つに合算すると、損益通算できない所得同士を相殺してしまう可能性があります。
業者が発行する年間損益資料の通貨が外貨の場合は、円換算方法も確認しましょう。
国内FXにかかる税率の内訳

国内FXの対象取引では、所得税・地方税に加えて、その年の制度に応じた特別税を確認します。税率は「所得税15%+地方税5%」だけで終わらない点に注意が必要です。
所得税と住民税を合わせて考える
国税庁によると、一定の先物取引に係る雑所得等は、所得税15%、地方税5%で申告分離課税されます。
たとえば課税対象となるFX所得が100万円なら、所得税の基本部分は15万円、地方税の基本部分は5万円という計算です。
ただし、所得税には復興特別所得税が加わるため、2026年分の実際の負担は単純な20%ではありません。
必要経費や損失の繰越控除などを適用する場合は、税率を掛ける前の所得金額自体が変わります。年間利益額へそのまま税率を掛けず、課税対象所得を先に計算しましょう。
特別所得税は対象年の制度を確認する

2026年分では、所得税額に対して復興特別所得税2.1%が加算されます。所得税15%に対する2.1%なので、所得全体の2.1%ではありません。
このため、2026年の国内FXでは、所得税15%+復興特別所得税相当0.315%+地方税5%で、一般に20.315%と説明されます。
国税庁は、2027年分以後について復興特別所得税と防衛特別所得税の制度変更も案内しています。
税制は改正される可能性があるため、申告する年の国税庁資料を確認し、前年の税率をそのまま使わないことが大切です。
納税資金は利益が出た時点から分けておくと、翌年の申告時に資金不足になりにくくなります。例えば年間利益100万円なら、概算で20万円程度を使わず残す、といった管理ができます。実際の税額は経費・繰越損失などで変わるため、あくまで資金確保の目安として扱いましょう。
参考:国税庁「No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例」
FXで確定申告が必要になる主なケース

確定申告の要否は、FX利益だけでなく、給与の有無、給与の支払先数、ほかの所得、所得控除などによって変わります。「20万円を超えたら全員申告」と単純化しないことが必要です。
給与所得者は他の所得も合わせて判断する
年末調整を受けた一般的な給与所得者では、給与・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える場合、確定申告が必要になる代表的なケースです。
ここで見る20万円はFXの利益だけではなく、副業などほかの対象所得も含めた所得金額です。
また、給与収入が2,000万円を超える人など、20万円基準とは別の理由で確定申告が必要になる場合があります。
FXだけを見て判断せず、自分の給与・他所得・申告状況をまとめて確認しましょう。
給与がない人は所得と控除を確認する
専業主婦・主夫、学生、無職など給与所得がない方は、給与所得者向けの「20万円以下なら申告不要」という基準をそのまま使えません。
所得合計と基礎控除などの所得控除を比較し、所得税の申告が必要かを判断します。
FX所得が小さくても、ほかの所得があれば合算して考える必要があります。
扶養や住民税にも影響する場合があるため、家族の税務上の扶養条件も確認するとよいでしょう。
複数の給与がある人は条件を分けて考える

2か所以上から給与を受け取っている方は、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与・退職以外の所得などを合わせて申告要否を判断するケースがあります。
そのため、「FX所得だけが20万円以下だから申告不要」とは判断できない場合があります。
副業先の給与、雑所得、FX所得を一覧にし、どの給与が年末調整済みか確認します。
判断が複雑な場合は、国税庁の確定申告書等作成コーナーや税務署の案内を利用するとよいでしょう。
確定申告の要否を確認する際は、給与所得、FX、ほかの副業所得、不動産所得などを一覧にします。「FXだけなら20万円以下」という見方ではなく、給与・退職所得以外の対象所得の合計を見るケースがあるためです。
年末調整済みか、給与を何社から受けているか、医療費控除などで申告する予定があるかも一緒に確認すると判断しやすくなります。
所得20万円以下でも注意したい申告

所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告や、ほかの理由で確定申告をする場合の扱いには注意が必要です。
住民税の申告が必要な場合がある
給与所得者が所得税の確定申告をしない場合でも、住民税について別途申告が必要になる場合があります。
「20万円以下」という所得税上の申告不要制度を、住民税まで一律に適用できると考えないことが重要です。
自治体によって申告方法や期限の案内があるため、居住地の市区町村へ確認します。
少額だから何もしなくてよいと判断せず、所得税と住民税を分けて確認しましょう。
還付申告ではFXの所得も含める
医療費控除や住宅ローン控除の初年度など、別の理由で確定申告をする場合は、申告書へFXを含む所得も適切に記載する必要があります。
「FXは20万円以下だから確定申告書へ書かなくてよい」と切り離すのではなく、その年の所得全体を申告します。
還付額だけを先に計算せず、FX所得を加えた場合の税額も確認しましょう。
FX所得を計算する順番
年間損益報告書を早めに取得しておくと、還付申告時にも漏れを防ぎやすくなります。
住民税の扱いは居住自治体へ確認します。所得税の申告不要制度が使えるケースでも、住民税について申告が必要となる場合があるためです。
また、確定申告を行えば所得税の申告内容が住民税計算にも使われます。所得税だけ還付されればよいと考えず、翌年度の住民税負担も含めて資金を残しましょう。
FXの雑所得の計算方法

FXの所得は、年間の確定損益をもとに、取引に必要な経費を差し引いて計算します。口座への入出金額ではなく、損益を基準にします。
年間の確定損益から必要経費を差し引く
基本的には、年間の利益-年間の損失-必要経費という考え方で所得金額を整理します。
FX会社の年間損益報告書には、決済損益やスワップ損益などがまとめられていることがあります。
複数口座を使っている場合は、対象となる取引の年間損益を合算します。
必要経費を計上する場合は、FX取引との関連性を説明できるよう領収書や利用明細を保存しましょう。
スワップの課税時期を取引条件で確認する
スワップポイントは、FX会社によって未決済のまま確定残高へ振り替えられるかなど取扱いが異なります。
決済時にまとめて損益へ反映する会社と、保有中にスワップだけを確定できる会社では、年間取引報告書への反映時期が異なる可能性があります。
画面に「累計スワップ」と表示されているだけで課税時期を自己判断せず、FX会社の税務案内と年間損益報告書を確認します。
不明な場合は、その年の報告書をもとに税務署・税理士へ確認するとよいでしょう。
所得計算では、入金額や出金額を利益と混同しないことが重要です。100万円入金して120万円出金しても、途中で追加入金や未決済ポジションがあれば20万円がそのまま課税所得とは限りません。
年間取引報告書の「実現損益」「スワップ」「手数料」などの項目を確認し、必要経費は別に整理して所得額を計算します。
FXで必要経費にできる費用の考え方

必要経費は「FXに関係しそう」という理由だけで計上するのではなく、所得を得るために直接必要だったかを説明できることが重要です。
取引に直接必要な書籍代や通信費
FX取引のために購入した専門書、取引専用の情報サービス、通信費の一部などは、取引との直接的な関連性があれば必要経費として検討できます。
パソコンやスマートフォンも、FX専用で使っているか、私用と共用しているかで扱いが変わります。
高額な機器は一括経費にできず減価償却が必要になる場合があります。
何でも経費にするのではなく、支出の内容と利用目的を記録しておきましょう。
私用分を区分して根拠資料を残す

インターネット回線やスマートフォンを私生活とFXの両方に使っている場合は、FX利用分を合理的に区分する必要があります。
利用時間や用途など、自分が採用した按分根拠を残しておきます。
領収書、クレジットカード明細、契約書、購入した書籍名なども保存します。
経費計上できるか不明な支出は、金額だけで判断せず税務署・税理士へ確認しましょう。
必要経費を整理するときは、「支払日」「金額」「支払先」「FXとの関係」「按分率」を一覧にします。書籍ならタイトル、情報サービスなら利用目的、通信費ならFX利用割合の根拠を残します。
私用のパソコン代を全額経費にするなど、取引との関連を説明できない計上は避けましょう。高額資産は減価償却の扱いも確認が必要です。
FXで損益通算できる範囲

国内FXの損失は、すべての所得と自由に相殺できるわけではありません。国税庁が定める「先物取引に係る雑所得等」の範囲を確認します。
対象となる国内FXや先物取引の損益
国税庁によると、一定のFXや先物・オプションなど先物取引に係る雑所得等の範囲内では、利益と損失を通算できる場合があります。
複数の国内FX口座を使っている場合も、対象取引であれば年間損益をまとめて計算します。
一つの口座で利益、別口座で損失があるなら、利益だけを申告しないよう注意します。
年間取引報告書をすべて集め、同じ税区分の取引か確認しましょう。
給与や株式売買の損益とは通算できない
国内FXの「先物取引に係る雑所得等」の損失を、給与所得や通常の上場株式売買の利益と相殺することはできません。
税区分が異なるためです。
「投資で出た損失だから株の利益と相殺できる」と考えず、FXはFXの対象区分で計算します。
海外FXなど総合課税の雑所得についても扱いが異なるため、国内FXとまとめて通算しないよう注意しましょう。
損益通算の確認では、商品名ではなく税区分を見ます。国内FX、一定の商品先物・金融先物などが同じ特例対象になることがありますが、株式譲渡所得や給与所得とは別区分です。
複数商品を使う場合は、年間報告書ごとに税区分をメモしてから合計すると、対象外の損益を混ぜるミスを減らせます。
国内FXの損失を3年間繰り越す条件

一定の国内FXで損失が出た場合、要件を満たせば損失を翌年以後3年間繰り越し、将来の対象利益から控除できます。
申告前の確認
損失が出た年に確定申告する
繰越控除を利用するには、損失が発生した年について確定申告を行うことが必要です。
「利益がないから申告不要」と何もしないと、翌年以降の利益から控除できなくなる可能性があります。
所定の計算明細書や付表を添付し、対象損失額を申告します。
損失額が大きい年ほど、翌年以降の節税に影響するため、申告期限前に確認しましょう。
翌年以降も連続して申告する

損失を繰り越している期間は、取引がない年や利益が少ない年でも継続して確定申告することが必要になる場合があります。
国税庁の要件に従い、毎年繰越額を更新します。
たとえば1年目に100万円の損失、2年目に40万円の対象利益なら、要件を満たせば差引後の繰越残額を次年度へつなげます。
具体的な記載方法は、その年の申告書・付表の様式を確認しましょう。
繰越控除を利用する場合は、損失が出た年だけ申告して終わりではありません。翌年に取引がなくても、繰越を維持するために必要な申告を継続することがあります。
前年の申告書控えと繰越残高を保存し、今年いくら使い、翌年へいくら残るかを毎年更新すると管理しやすくなります。
FXの確定申告で準備するものと手順

確定申告では、年間損益と必要経費を先に整理し、対象となる税区分の計算明細書へ反映します。
年間損益報告書と経費資料をそろえる
まず、利用した各FX会社から年間損益報告書・年間取引報告書を取得します。
必要経費を計上する場合は、領収書、カード明細、通信費の按分根拠などを整理します。
複数口座があるなら、対象区分ごとに合計損益を計算します。
前年から損失を繰り越している場合は、前年の確定申告書控えも準備しましょう。
計算明細書と必要な付表を作成する
国内FXの対象所得では、「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」などを使って所得金額を計算します。
損失の繰越控除を使う場合は、繰越損失に関する付表も必要になります。
国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用すると、入力した所得・控除から申告書を作成できます。
その年の様式を使い、前年版の書式を流用しないようにしましょう。
申告書を提出して期限までに納税する

申告書はe-Taxや税務署への提出などで申告できます。
所得税の確定申告期間や納付期限は年によって案内されるため、対象年分の国税庁スケジュールを確認します。
税額が大きくなりそうな場合は、申告時期になってから資金を用意するのではなく、利益が出た段階で納税資金を分けておくとよいでしょう。
地方税についても、申告内容をもとに後日納付が必要になるため資金を残しておきます。
申告準備は、①年間損益報告書を集める、②必要経費を集計する、③税区分ごとに損益を整理する、④繰越損失を確認する、⑤申告書・計算明細書へ入力する、という順番にすると進めやすくなります。
e-Taxを使う場合も、入力後に年間損益と申告書の所得金額が一致しているか確認してから送信しましょう。
FXの雑所得を計算して申告の要否を確認しよう

国内の一定のFX利益は、先物取引に係る雑所得等として申告分離課税されます。2026年分では所得税15%、地方税5%に加え、復興特別所得税を考慮します。
確定申告が必要かは、FX利益だけでなく給与、ほかの所得、控除、給与の支払先数などで変わります。給与所得者の20万円基準も、すべての方へ一律に当てはまるものではありません。
所得を計算するときは、年間の確定損益から必要経費を差し引きます。国内FXの対象損失は、一定の先物取引との損益通算や3年間の繰越控除を利用できる場合があります。
まず年間損益報告書と経費資料を集め、自分の取引がどの税区分に当たるか確認しましょう。税務上の判断が難しい場合は、国税庁の現行案内や税務署・税理士へ確認することが大切です。
特に、国内FXと海外FXを併用している、未決済スワップの振替を行っている、必要経費の私用按分が大きい、損失繰越を初めて使うといったケースは確認項目が増えます。
年末までに口座別損益と経費を整理し、申告時期に一から履歴を探さなくて済む状態を作っておきましょう。
参考文献



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